フリーターでデザインをやっていたキミのこと

アルバイトを数回頼んだことがあるが彼は約束したことをしっかり遂行してくれとても安心できる若者だった。給料を受け取りに会社まで来たときに、これからもお願いできるのか聞くと、近いうちに四国に帰郷するという。どうしてかと聞くと、自分はデザインを勉強していて、帰郷してそれを続けたいとか。と言いながら持っていたバッグからはがき大の分厚いファイルを取り出し、自分が描いたデザイン画を見せてくれた。どれもが即興で描いたものだと言う。わたしはデザインについてはよくわからないが、いずれもがよい作品だった。何枚か見ているうちに、「1枚売ってもらえないだろうか」わたしの申し入れに対して、「差し上げます。自分の作品などまだ売ったことがありません」「いや、わずかしか出せないが1000円でどうだろうか」彼は、自分の作品がはじめて売れたことで、とても高揚し、「もう1枚差し上げますよ」といって2枚をわたしにくれた。「あ、そうだ。君のサインを裏にしてくれない」 


今彼はどこにいるのだろう。田舎に帰ったのだろうか。まだフリーターをしながら絵を書いているだろうか。やめないで続けているだろうか。いつか必ず世間で認められるようになって、その作品が高い値段がつくことをわたしは期待しています。そのうちわたしは君のことを忘れるかもしれないが


きみも一期一会って言葉知ってるよね 一生に一度の出逢いを大切にするべき、出逢う人とは今後もう二度と逢えないかもしれないという意味です