蓼科高原(長野県茅野市)

お盆休みを利用して、14日より蓼科高原のリゾートホテルに家族で滞在。翌15日はいつものように一人早く目が覚めて車で近くを散策。横川渓谷の乙女の滝などを見学、写真撮影などして楽しむ。そろそろホテルでは朝食バイキングの時間だ。戻る途中いつものように家内からメールと電話で「早く戻れ」と連絡が入る。ホテルも近づいてきたので返信もしないでいた。標高1350mにあるレストランには明るい朝の日差しが差し込み窓から八ヶ岳の眺望がすばらしい。楽しいざわめきに満ちたテーブルにすわり何となくメールを確認していたら、家内からのコールの他に会社のN(コーディネーター)からもメールが1通入っているではないか。


「今日初出のスタッフの○○さんのお兄さんから電話がありました。実は妹は2日前の13日に亡くなりました。電話が繋がらないので会社にFAXもしましたと言っておられました。所長にも電話入らなかったですか。少しウソっぽいですが、派遣先にありのまま連絡していいでしょうか」派遣会社をやっていると、スタッフが飛ンダリ、逃ゲタリすることは再三経験させられているのでNがこのような言い方をしてきても違和感はない。しかし家族がそのようなウソをつくことはまず考えられない。あわててコーディネーターのNに電話をして内容を確認した。「それはおそらく事故か何かあったんだ。家族がそんなウソをつくはずがない。わたしから家族に電話をして直接確認する。派遣先の工場長にもわたしから連絡をするよ」しかし本人のケータイも家の電話にもまったく繋がらない。あんなに元気で健康そうな娘に何があったんだろう。工場長との面談でもハキハキと笑顔で答えてくれて面談を通過し15日からの出社についてもたいへん喜んでいたのではなかったのか。天王寺駅の都ホテルで待ち合わせ彼女を会社まで案内したときのことを思い出した。笑顔でわたしに挨拶をしてくれ、途中歩きながら仕事内容や会社のことそして面談の注意点などそして雑談も交わした。とても素直で少しおっとりしたタイプだった。


半信半疑で工場長に報告を入れる。お盆休みが明けた17日に会社に出勤。確かにFAXが届いていた「人材コーディネーターN様 ○○の母です。短い間でしたけれど、○○がお世話になりありがとうございました。実は8月13日朝に○○が亡くなりました。色々とお世話に成りありがとうございました。コーディネーターのNさんの携帯にかけましたが繋がりませんでしたのでFAXさせていただきました。8/13 」なんだこれは?FAXを読み終えるとスグニ彼女の家に電話をした。お母さんがでられる。「どうされたのでしょうか?」「実は娘は友達がいるニューヨークに何度か行ったことがあって。あることで悩んでいました。朝、救急車を呼んだのですが、間に合いませんでした」お母さんのはなしはトギレトギレでよく事情がのみこめない。しかし彼女が自ら命を絶ったことがわかりました。


お母さんはとてもよくできた人だった。「たいへん迷惑をおかけしすみませんでした。ありがとうございました。わたしも娘のことに気がつきませんでした。こんなことを言ってももう娘はもう帰ってきませんが。前の晩もふつうに話をしていましたのに・・・23歳でした。」お母さんの悲痛な思いが言葉の合間から感じられた。わたしもことばが詰まってきた。「いや、うちのことなんてそんなことはどうでもいいことですよ。お母さんまたあらためます。」どんな言葉もおかあさんには無意味だろう。わたしは話を続けることができなくなった。どうして若い娘が突然命を断たないといけなかったのだろうか?あんないい娘が。人の心の中はわからない